ARアバター営業の始め方|最低限必要な機材・ツール・設定まとめ

投稿日: 2026年2月28日

近年、リモートワークやオンライン商談が当たり前となる中で、新たな営業手法として注目を集めているのが「ARアバター営業」です。顔出しに抵抗がある場合や、キャラクター性を活かしたブランディングを行いたい企業にとって、非常に有効な手段となりつつあります。

本記事では、これからARアバター営業を始めたいと考えている営業担当者やマーケターの方々に向けて、最低限必要な機材、ソフトウェア、そして具体的な設定方法から活用事例までを網羅的に解説します。

ARアバターを活用したビデオ会議のイメージ
出典: HQSoftware - Augmented Reality (AR) for Video Conferences

1. イントロダクション - ARアバター営業とは

「ARアバター営業」とは、ZoomやGoogle Meet、Microsoft Teamsなどのオンライン会議ツールにおいて、自分自身の生身の映像の代わりに、3Dまたは2Dのアバター(キャラクター)を表示させて行う営業活動のことを指します。

これは単なる「VTuberごっこ」ではありません。ビジネスの現場において、以下のような課題を解決するソリューションとして導入が進んでいます。

  • 在宅勤務時の背景や身だしなみを気にする必要がない
  • 第一印象をコントロールし、親しみやすさを演出できる
  • 「中の人」が変わっても、キャラクターとして均質な対応が可能になる
  • 視覚的なインパクトにより、商談の記憶定着率を高める

特別なスタジオや高額な機材がなくても、一般的なPCとWebカメラがあれば、今日からでも始められるのが大きな魅力です。

2. ARアバター営業のメリット

生身の人間ではなくアバターを使うことには、ビジネス上どのようなメリットがあるのでしょうか。主なポイントは以下の3点です。

(1) 心理的ハードルの低下とコミュニケーションの活性化

対面やビデオ通話では、どうしても相手の表情や視線を過度に意識してしまい、緊張感が生まれることがあります。アバターを介することで、適度な距離感が生まれ、心理的なハードルが下がります。これにより、お客様も本音を話しやすくなり、結果としてヒアリングの質が向上するケースが多く見られます。

(2) ブランディングと差別化

競合他社が一般的なスーツ姿でオンライン商談を行っている中、自社のブランドイメージに合ったアバターで登場することは強力な差別化になります。例えば、IT企業なら近未来的なキャラクター、教育系なら親しみやすい動物キャラクターなど、商材に合わせた演出が可能です。

(3) 営業担当者の負担軽減

在宅ワークにおいて、部屋の片付けやメイク、服装などの準備は意外と負担になります。アバターを使用すれば、これらの準備時間を大幅に削減でき、純粋に商談の内容や準備に時間を使えるようになります。

3. 必要な機材

ARアバター営業を始めるために必要な機材は、実はそれほど多くありません。最低限必要なものは以下の通りです。

PCデスク環境のセットアップ例
出典: TechCrunch - How to create the best at-home videoconferencing setup

Webカメラ

アバターを動かすためには、自分の顔の動きをトラッキング(追跡)する必要があります。これにはWebカメラが必須です。

  • 推奨スペック: 720p/30fps以上
  • ポイント: 特別な深度センサー付きカメラなどは不要です。一般的なロジクール製などのWebカメラや、ノートPC内蔵のカメラでも十分機能します。ただし、部屋が暗いとトラッキング精度が落ちるため、照明には気を配りましょう。

マイク

アバターの口の動き(リップシンク)は、音声に合わせて動くタイプと、カメラで口の形を認識して動くタイプがあります。いずれにせよ、クリアな音声は商談の基本です。

  • 推奨: ヘッドセットまたはUSB接続のコンデンサーマイク
  • 注意点: PC内蔵マイクはキーボードの打鍵音や環境音を拾いやすいため、避けたほうが無難です。

PC / スペック

アバターを表示させるソフト(トラッキングソフト)と、Web会議ツール(Zoomなど)を同時に動かすため、ある程度のスペックが必要です。

項目最低スペック目安推奨スペック
OSWindows 10 / macOSWindows 10 / 11 (64bit)
CPUCore i5 第8世代以降Core i7 第10世代以降
メモリ8GB16GB以上
GPU内蔵グラフィックスGeForce GTX 1650以上

特に「3Dアバター」を使用する場合は、グラフィックボード(GPU)を搭載したPCが推奨されます。2Dアバターであれば、一般的なビジネスノートPCでも動作可能なケースが多いです。

4. 必要なソフトウェア・ツール

機材が揃ったら、次はソフトウェアの準備です。大きく分けて「アバターを作る」「アバターを動かす」「映像を届ける」の3つの工程に必要なツールがあります。

(1) アバター作成ツール

オリジナルのアバターを作成するためのツールです。専門知識がなくても簡単に作れるものが増えています。

  • VRoid Studio(ブイロイドスタジオ): ピクシブ株式会社が提供する無料ツール。直感的な操作で3Dキャラクターを作成でき、商用利用も可能です(利用規約は要確認)。作成したデータは「.vrm」という形式で保存します。
  • REALITY(リアリティ): スマートフォンアプリで作成し、連携機能を使う方法もあります。

(2) トラッキングソフト(アバターを動かすソフト)

Webカメラの映像から表情や顔の向きを読み取り、作成したアバターに反映させるソフトです。

VSeeFaceのインターフェース画面
出典: VSeeFace 公式サイト
  • VSeeFace(ブイシーフェイス): Windows向けの無料ソフト。非常に軽量で動作が安定しており、VRM形式の読み込みに対応しています。表情認識の精度も高く、ビジネス利用におけるスタンダードな選択肢の一つです。
  • 3tene(ミテネ): 操作が簡単で、Mac版も存在するため、Macユーザーにはこちらが有力な選択肢となります。
  • Animaze by FaceRig: 以前主流だったFaceRigの後継ソフト。Live2Dなどの2Dアバターを使いたい場合に強力です。

(3) 配信ツール(仮想カメラ機能)

トラッキングソフトの画面を、ZoomなどのWeb会議ツールに「カメラ映像」として認識させるための機能です。

  • OBS Studio: 配信者向けの無料ソフトですが、「仮想カメラ」機能が非常に優秀です。VSeeFaceの映像を取り込み、それを仮想カメラとして出力することで、Zoom側でカメラデバイスとして選択できるようになります。
  • ※VSeeFace自体にも仮想カメラ機能が搭載されていますが、OBSを経由すると背景画像やテロップ(会社名や名前)を合成しやすいため、ビジネス用途ではOBSの併用をおすすめします。

5. 初期設定の流れ

ここでは、最も一般的な構成である「Windows PC + VRoid Studio + VSeeFace + Zoom」を想定した設定の流れを解説します。

  1. アバターの用意: VRoid Studioでキャラクターを作成し、「.vrm」形式でエクスポートします。
  2. VSeeFaceの起動と読み込み: VSeeFaceを起動し、Webカメラを選択した後、作成したVRMファイルを読み込みます。自分の顔を動かして、アバターが連動するか確認します。
  3. 仮想カメラの有効化:
    • パターンA(シンプル): VSeeFaceの設定にある「仮想カメラ」機能をオンにします。(事前にドライバのインストールが必要な場合があります)
    • パターンB(高機能): OBS Studioを起動し、「ソース」に「ウィンドウキャプチャ」を追加してVSeeFaceの画面を選択します。その後、OBSの「仮想カメラ開始」ボタンをクリックします。
  4. Web会議ツールの設定: Zoomなどを起動し、ビデオ設定のカメラ選択プルダウンから「VSeeFace Camera」または「OBS Virtual Camera」を選択します。

これで、Zoomの画面にあなたのアバターが表示されるようになります。

6. 活用事例

実際にビジネスの現場でどのように活用されているのか、具体的なシーンを見てみましょう。

バーチャルイベントでのアバター活用イメージ
出典: MootUp - Benefits of Using Avatars for Virtual Event

活用事例①:ITツールのインサイドセールス

課題: テレアポや初回接触の際、顔出しを求めると警戒されることがあり、関係構築に時間がかかっていた。

活用: 初回のオンライン面談をアバターで行うことを事前に告知。「まずは気軽にアバター担当者とお話ししませんか?」というフックでハードルを下げ、アポイント獲得率が向上しました。特に若年層のエンジニア採用面談などでも、話しやすい雰囲気作りとして効果を発揮しています。

活用事例②:社内研修・ウェビナー登壇

課題: 講師が毎回身だしなみを整える負担や、長時間顔を映し続ける精神的ストレスがあった。

活用: 定期開催の製品説明ウェビナーを、公式キャラクター(アバター)が進行する形式に変更。講師は自宅からリラックスして配信でき、受講者からも「キャラクターが可愛くて説明が頭に入りやすい」「質問チャットを投げやすい」と好評を得ています。

活用事例③:バーチャル展示会・イベント接客

課題: オンライン展示会において、静止画のアイコンだけでは来場者への呼びかけが弱く、スルーされてしまう。

活用: ブースの待機画面に動くアバターを表示させ、通りがかった(アクセスした)ユーザーにリアルタイムで手を振ったり声をかけたりする対応を実施。生身の人間よりも「見られている」圧迫感が少なく、かつ「無人ではない」ライブ感を演出できるため、ブース滞在時間が延びる結果となりました。

7. よくある質問とトラブルシューティング

Q. 表情が固まって動きません。

A. 部屋の明るさを確認してください。逆光や暗すぎる環境ではカメラが顔を認識できません。また、前髪が長すぎて目が隠れている場合もトラッキング精度が落ちます。

Q. Zoomで相手に「ふざけている」と思われませんか?

A. TPOの判断は必要ですが、事前に「本日は弊社公式キャラクターのアバターにてご案内させていただきます」と一言添えるだけで、多くの場合はポジティブに受け入れられます。エンタメ業界やIT業界以外では、初回は生身で挨拶し、2回目以降の関係性ができてから導入するのも一つの手です。

Q. 声と口の動きがズレます。

A. ネットワーク遅延やPCの負荷が原因の場合があります。不要なアプリケーションを終了させるか、VSeeFaceの設定で「画質」を少し下げることで改善することがあります。

8. まとめ

ARアバター営業は、単なる「顔隠し」の手段ではなく、デジタル時代における新しいコミュニケーションの形です。

初期投資も少なく、WebカメラとPCさえあれば誰でも始められる手軽さがありながら、相手に与える印象を大きく変える力を持っています。特に、リモートワーク下での「営業担当者の心理的安全性」を確保しつつ、「顧客とのエンゲージメント」を高めることができる点は、企業にとって見逃せないメリットと言えるでしょう。

まずは社内のミーティングや、親しいクライアントとの打ち合わせから試験的に導入し、反応を見ながら本格的な運用を検討してみてはいかがでしょうか。新しい営業スタイルが、御社のビジネスに新たな可能性をもたらすかもしれません。

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