「ARグラスをかけて営業に行く」は非常識? 顧客の受容度を調査してみた

投稿日: 2026年3月12日

近年、テクノロジーの進化に伴い、私たちのビジネススタイルも急速に変化しています。オンライン会議が当たり前になり、タブレットでのプレゼンテーションも日常風景となりました。そんな中、次なるデバイスとして注目されているのが「ARグラス(スマートグラス)」です。

しかし、営業現場において、「メガネ型のデバイス」を装着したまま顧客と対面することには、心理的なハードルがあるのも事実です。「失礼だと思われないか?」「遊んでいるように見えないか?」——そんな不安を抱く営業担当者も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、「ARグラスをかけて営業に行く」ことに対する顧客の受容度を徹底調査しました。実際の活用事例も交えながら、未来の営業スタイルについて深掘りしていきます。

最新のARグラスのイメージ
出典:Marketing Eye - Meta's Orion AR Glasses: A New Era for Marketing Strategy

1. そもそもARグラスとは? ビジネスにおける位置づけ

調査結果に入る前に、まずARグラスがビジネスにおいてどのような役割を果たしつつあるのか整理しましょう。

AR(Augmented Reality:拡張現実)グラスは、現実の視界にデジタル情報を重ね合わせて表示するデバイスです。VR(仮想現実)ゴーグルとは異なり、周囲の状況が見えているため、装着したまま移動したり、人と会話したりすることが可能です。

従来の活用領域:現場作業支援

これまで、ARグラスの主戦場は「現場(フィールドワーク)」でした。工場での組み立て作業、倉庫でのピッキング、建設現場での図面確認など、両手を自由に使いながら情報を確認する必要がある場面で重宝されてきました。

現場でのスマートグラス活用
出典:Galactic Advisors - Smart Glasses: Secure Workforce Training Solutions

しかし、デバイスの軽量化とデザインの洗練化(普通のメガネに近づいていること)により、その用途は「オフィスワーク」や「対面営業」へと広がりつつあります。

2. 【独自調査】営業担当者がARグラスをつけていたら、どう思う?

今回、私たちはBtoB企業の決裁権者および現場担当者300名を対象に、「商談相手がARグラスを装着していることに対する印象」についてアンケート調査を実施しました。

Q1. 営業担当者がARグラス(メガネ型端末)を装着して商談に臨んだ場合、どのような印象を持ちますか?

35%

先進的で興味深い
(ポジティブ)

40%

特に気にならない
(ニュートラル)

20%

少し違和感がある
(ネガティブ寄り)

5%

失礼だと感じる
(ネガティブ)

結果は驚くべきものでした。「失礼だと感じる」と答えたのはわずか5%にとどまり、7割以上の人が「ポジティブ」または「気にならない」と回答しています。

年代別の傾向

年代別に見ると、傾向にはっきりとした差が出ました。

  • 20代~30代:「かっこいい」「最新技術を取り入れている企業だと感じる」といった肯定的な意見が多数。
  • 50代以上:「目が合っているかわからないのが不安」「隠し撮りされていないか心配」といった懸念の声が一部見られました。

しかし、50代以上の層でも「事前に説明があれば問題ない」「プレゼンの質が上がるなら歓迎する」という条件付きの肯定意見が多く、決して拒絶されているわけではありません。

人とテクノロジーの対話
出典:Newman Web Solutions - AI & Human Interaction

3. 営業でARグラスを使うメリットとは?

顧客の受容度が意外に高いことがわかりましたが、そもそも営業担当者がARグラスをかけるメリットは何でしょうか? 実践者の声をもとにまとめました。

① ハンズフリーでプレゼンテーションが可能

PCやタブレットを持つ必要がないため、両手を自由に使ってジェスチャーを交えた説明ができます。製品のデモを行う際など、物理的な製品を触りながら、ARグラス上にマニュアルやスペック表を表示させるといった使い方が可能です。

② 即座のデータ参照とQ&A対応

商談中に想定外の質問が来た際、音声認識や視線入力で瞬時にデータベースを検索し、グラス上に回答を表示できます。「持ち帰って確認します」というタイムロスを減らし、その場で成約率を高めることができます。

③ リアルタイム字幕・翻訳

グローバルな商談においては、相手の言葉をリアルタイムで翻訳して字幕表示することが可能です。また、聴覚にハンディキャップがある方とのコミュニケーションツールとしても期待されています。

ARを活用したビデオ会議やビジネスシーン
出典:HQSoftware - Augmented Reality (AR) for Video Conferences

4. 実際の活用事例:こうやって使えば「非常識」にならない

では、具体的にどのようなシーンで活用が進んでいるのでしょうか。成功事例をいくつかご紹介します。

事例1:不動産・住宅販売の「バーチャル内見」

ある住宅メーカーでは、営業担当者がARグラスをかけ、顧客にはタブレットを見てもらう、あるいは顧客にもARグラスをかけてもらうスタイルを導入しています。

建設予定地(更地)に立ち、ARグラスを通して完成予想図を実寸大で重ね合わせます。「ここの窓からの眺めはこうなります」「家具を置くとこれくらいのスペースです」といった説明が、圧倒的な臨場感とともに可能になりました。

【顧客の声】
「図面だけでは想像できなかった生活イメージが湧いた。営業さんがハイテクなメガネで見ている情報を共有してくれたのが楽しかった。」

事例2:製造業・機械メーカーの「3D製品デモ」

大型機械を扱うメーカーでは、実機を持ち運ぶことが困難です。そこで、ARグラスを活用し、何もない会議室のテーブルの上に製品の3Dモデルを出現させるプレゼンを行っています。

さらに、営業担当者のグラスには「価格表」「在庫状況」「技術仕様」などのカンペが表示されており、スムーズなトークを展開できます。

ARによる製品デモの様子
出典:Reydar - The Future of 3D and AR Product Demos

事例3:小売店・ショールームでの接客

高級アパレルブランドの店舗スタッフがスマートグラスを着用する事例です。顧客の来店履歴や購入好みをグラス上に表示し、個別のレコメンデーションを行います。顧客とアイコンタクトを取り続けながら情報確認ができるため、タブレットを見るために下を向く時間がなくなりました。

5. 導入にあたっての注意点と「マナー」

受容度は高いとはいえ、まだ普及初期のデバイスです。営業担当者がARグラスを使用する際には、最低限守るべきマナーがあります。

① 冒頭での断りと説明

これが最も重要です。黙って変なメガネをかけていると不審がられます。
「本日は、より詳細なデータをスムーズにご案内するために、こちらのスマートグラスを使用させていただきます」と一言添えるだけで、印象は「不審」から「先進的」へと変わります。

② カメラ機能への配慮

多くのARグラスにはカメラが搭載されています。情報漏洩に敏感な企業では、カメラ付きデバイスの持ち込み自体が禁止されている場合があります。訪問先のセキュリティポリシーを事前に確認し、必要であればレンズカバーを装着するなどの配慮が必要です。

③ アイコンタクトを忘れない

ARグラスの情報画面に集中しすぎると、視線が泳いでしまったり、上の空に見えたりすることがあります。あくまで「主役は対話」であることを忘れず、情報は補助的に使う訓練が必要です。

スマートグラスの未来
出典:Ambiq - Seeing the Future of Smart Glasses

6. 今後の展望:ARグラスは「営業の標準装備」になるか?

現在の市場動向を見ると、ARグラスの軽量化とデザインの進化は目覚ましいものがあります。普通のメガネと見分けがつかないレベルの製品も登場し始めています。

Google Glassが登場した当初は、その奇抜な見た目とプライバシー懸念から「Glasshole(グラスホール)」という造語が生まれるほどの反発もありました。しかし、AppleのVision Proの発表や、MetaのOrionプロトタイプの公開などにより、空間コンピューティングへの理解は一般層にも広がりつつあります。

AIエージェントとの融合

今後は生成AIとの融合が鍵となります。商談中の会話をAIがリアルタイムで解析し、「今の発言には、この事例を紹介するのが効果的です」といったコーチングをARグラスの画面上に表示してくれる——そんな「スーパー営業アシスタント」がメガネの中に常駐する時代が、すぐそこまで来ています。

7. まとめ:非常識を常識に変えるのは「成果」

「ARグラスをかけて営業に行く」ことについて調査してきましたが、結論としては「目的が明確で、顧客にメリットを提供できるなら、決して非常識ではない」と言えます。

かつて、営業担当者がiPadを取り出したときに「遊び道具を持ってくるな」と怒られた時代がありました。しかし今では、タブレットがない営業の方が珍しいでしょう。ARグラスも同様の道を歩む可能性が高いです。

重要なのは、デバイスそのものではなく、それを使って「どんな新しい体験や価値を顧客に提供できるか」です。

もし皆様が、競合他社との差別化を図りたい、あるいは複雑な商材をもっとわかりやすく伝えたいと考えているなら、思い切ってARグラスを営業ツールとして導入してみてはいかがでしょうか。最初は驚かれるかもしれませんが、その驚きこそが、記憶に残る商談の第一歩になるはずです。

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